GREE上場に思う【追記あり】

SNSの老舗GREEが、2008年12月17日に上場するそうです。


「GREE」がマザーズ上場へ

同サイトを“趣味”で運営していた田中良和社長(31)が2004年12月に創業した。GREEの会員数は10月下旬に700万人を超えた。KDDIと提携し、au向けSNSEZ GREE」も運営している。

 従業員数は79人、平均年齢は28.7歳。2008年6月期(単体)の売上高は29億3700万円、営業利益は10億4900万円、経常利益は 10億5100万円、純利益は5億8200万円。筆頭株主の田中社長が62.4%を保有。第3位株主のKDDIリクルートがそれぞれ約6.9%を保有している。


GREEって、こんなに利益が出ていたんですね。経常で3割近くも出てるんですか。mixiと同じぐらいですね。先日のエントリーで取り上げたレポートでは、WEB2.0企業の8割以上が黒字転換できていないという話だったのですが、やはり規模が出ると違う世界ですね。いやしかし、そのGREEも法人化前の2004年07月時点ではこんな感じだったので、隔世の感がします。


「それでいい、楽しいから」――7万人の町「GREE」を一人で作ってる会社員

GREEは、7月29日現在で7万1364人が利用する国内最大規模の無料ソーシャルネットワーキングサイト。ユーザーからの招待があれば、誰でも無料で参加できる。

 7万人超のコミュニティサイト。企業が維持するのも大変な規模だが、開発やサポートは田中さん一人だ。田中さんはある大手IT関連企業の社員。といってもGREEは仕事とは無関係。作業は終業後や休みの日などに行う。サーバ費用などはすべて自己負担だ。
GREEからの収入も、ない訳ではない。サイト内にGoogleアドワーズ広告を表示しているほか、Amazonアフィリエイトサービスを導入。ユーザーが紹介した本やCDがレビューを通じて購入されれば、売り上げの数%が支払われることになっている。しかし……。

 「儲かりませんよ。Amazonアフィリエイトは、レビューサービスを使いたいから入れてるだけ。アドワーズも、タダで貼れるんだから貼ってみよう、くらいの気持ち」。サーバのレンタル費用など到底カバーできない。私財を投じて、運営を続ける。

 でも、それでいい、楽しいから、と田中さんは笑う。「町を作っている感覚。『シムシティ』リアル版みたいな。今日はビルが建った、今日は線路が通じた。住民は今日も幸せだった、みたいな」。


こんな変化がたった4年で起こるんですね。私たちベンチャーキャピタリストにとって、現在を見るのではなく将来を見ることの重要性を再認識させられたような気がします。投資候補企業のデューデリをしていると、つい現在の売上とか事業の進捗状況などで、その会社を評価してしまいがちです。しかし、本当に大きく育つベンチャーは、そういう基準で評価してはいけないような気がします。このGREEの成長を見て、下記のような言葉を思い出しました。


"venture capitalists invest in infant giants, not small firms."
ベンチャーキャピタルは、零細企業ではなく、インファント・ジャイアント(=巨人の子供)に投資するのだ
Thomas Hellmann (2000): “Venture capitalists: the coaches of Silicon Valley”より


実際問題、現場で「零細企業」と「インファント・ジャイアント」を見分けるのはとても難しいのですが、あえて言えば、会社側の中期計画にも書かれていない伸びシロ部分まで見る必要がある気がします。様々なベンチャーを見ていると、たまにワクワクする会社に出会うことがあります。売上ゼロで社員3人でも、ワクワクさせてくれるものを持っている会社があるのです。ようするに「この会社が世の中を変えるかも」という自分の中にある期待感なのだと思いますが、そういったものに賭けるべきなのかもしれないと改めて思いました。




【2008.11.19追記】
インフィニティベンチャーズの小林雅さんのブログに、GREEへの投資経緯が乗っていました。法人化直後の会社にpre8億円をつけ1億円を投資、3年6か月で70-80倍のパフォーマンスとのこと(IPO時の時価総額を700-800億円と想定)。会員20万人を集めただけの未熟ベンチャーを8億円と評価したところが素晴らしいですね。あと下記が印象的でした。


グリーの成長 と ベンチャーキャピタル投資
http://venturecapital.typepad.jp/blog/2008/11/post-00dc.html

業績の伸びは当初の事業計画を超えたものだ。 つまり、事業計画なんて信じて投資するというのはバカげた話だということを証明している。とはいっても投資委員会というものがあり、それを通過しないと投資はできない。 そのために鉛筆なめて、利益計画を作成をサポートしたのは私自身だった。 


うちの会社もアーリーへの投資が多いので、今回の話は勇気付けられました。