アメリカのビジネスインキュベート環境

出張で、テキサス州サンアントニオで開催されたNBIA(National Business Incubation Association)に参加しました。この会合の参加者は、そのほとんどがインキュベーションマネージャーと呼ばれる人達で、ベンチャー企業の入居施設(インキュベーター)を運営する人達です。アメリカのビジネスインキュベート環境を垣間見ることができたので、ブログに乗せておきます。


■これまで、私にとってインキュベーターというと部屋貸しの不動産業のイメージでしたが、現在のアメリカは極端に言うと、入居スペース付きのベンチャーコンサルティングファームという印象でした。スペースだけではダメで、ExtraordinaryなValueが求められているとのこと。


インキュベーターによる入居企業支援メニューは、以下のように非常に多岐に渡っていました。VCからの資金調達額が、IMの一つの成果指標となっていて、そのための支援も充実している印象です。
    ・アントレプレナー教育
    ・ビジネスプラン指導
    ・従業員への教育支援(例、バイオハザード教育など)
    ・VC・エンジェルからの資金調達支援
    ・経営アドバイザリーボードの創設・運営
    ・販路構築支援(国内も海外も)


■ATDCの事例。
ATDCは、アメリカで最も成功しているインキュベーターの一つで、アトランタにあります。1999年以降、これまで、入居企業75社に対し、VCから1B$獲得の実績あり。このように好成績を残しているコツは、以下とのことでした。
    ・入居企業の選別
    ・起業経験のある人間でチームを作り、入居企業をサポート
    ・VCからの投資を得るために、教育・準備を行う
    ・VCとのネットワークを作り、継続的にコンタクトしている。
支援には次の3つのツールを使っているとのこと。1)Investment Feasibility Assessment 2)Fundraising Strategy Template 3)60秒エレベーターピッチ。


■Virginia Bio Technology Centerの事例。
バージニアバイオリサーチパーク内にあるインキュベーター。キッチンキャビネット(私設顧問機関)と呼ばれる経営アドバイザリーボードを作り、入居企業の支援をおこなっているそうです。そのメンバーは現役の企業経営者や専門家8〜10人で構成されていて、支援企業毎に違ったメンバー構成となっています。Bank of AmericaのSVPや、アムジェンのシニアマネージャーなどの錚々たる名前も並んでいるので、びっくり!!このメンバーが無報酬で参加するというのだからアメリカはすごい。会議では、具体的な経営課題について議論。メンターやネットワーキングも目的となっているようです。


アメリカの現状から、ひるがえって日本を見てみると、エンジェルもいない、インキュベーターの存在感もない状況。アメリカのようにたくさんの起業家が切磋琢磨して支援体制もしっかりしているところでは、VCは芽を見つけて育てれば良いが、日本それも東北においてはそれ以前に畑を耕す事も必要か。個人的には、この地域でやるべき事は山積みで、自分達に課せられた仕事は非常に大きいと感じました。