「ケースに学ぶ経営学」より


下記本を読みました。


「ケースに学ぶ経営学
東北大学経営学グループ著
有斐閣ブックス 2600円


18のケースを使って、経営学の基本的な考え方を解説していて、なかなか面白い本でした。
個人的に印象に残った部分を要約してご紹介します。


・米キャピタリストの経歴は、理工学系の大学院を卒業後、民間企業を経て、再びビジネススクール経営学ファイナンスを学び、VCで徒弟修業をしたあと独立するケースが多い。
ベンチャーの成長モデルは、損益分岐点を境にして、成長資源獲得期と成長組織構築期に分けられる。
・今日の米国VCは、効率的な投資と確実な収益の重視によって、成長資源獲得期のへの投資・支援という「本来のベンチャーキャピタル(classicVC)」の機能を果たせなくなっている。
・現在その時期への資金提供を担っているのは、3F、ブーツトラッピング、ATP、SBIR、公的VC、大学VC、エンジェルなどである。
・企業家は全能ではないので、チーム形成こそ成功の鍵。日本ではベンチャーキャピタリストが自ら経営チームに参加(大学の先生と組んで社長に就任)することにより成功した事例がある。これは経営人材の不足する日本独特のケースで、米国ではない。
死の谷を越えるには、技術そのものを売り込むのではなく、技術を活用することによりソリューションを提供するマーケティングが重要。共同研究により技術開発と開発資金を獲得し、チャーターカスタマーを獲得せよ。
大学発ベンチャーの創業では、研究者だけでは認知しえない市場ニーズを把握し、そのニーズにふさわしいビジネスモデルを構築できる経営人材の参加が成功の鍵。
・資本政策を策定する創業者には、企業成長と資金ニーズを対応させる計数感覚と、外部株主をどこまで認めるかといった高度な経営判断が求められる。
・日本には110万社を超える株式会社が存在するが、上場しているのはその0.4%弱にすぎない。
・創業から上場までの平均年数は、ジャスダック26.1年、マザーズ8.3年
・上場を狙うベンチャーのうち8割は証券会社から上場に耐えないと評価され、残り2割のなかでも、上場申請できるのはその半分程度にすぎない。株主を重視する組織経営の不備が原因。